2015年12月5日土曜日

声なきもの 声もつもの

光を浴びる葉を、楽しげにきらめかせて
土の温もりに、気持よさげに根をのばす
幹を伝う虫たちに、気を使って静かに佇みながら
駆け出したい心が溢れ出て、枝を踊るようにゆらす

私には聞こえる
声を発せないあなたの
大きな歌声が

私には見える
動けないあなたの
全身を駆け巡る凄まじい躍動が

歌いたくて
駆け出したくて

せめてもと
精一杯に葉と葉を擦り合わせて奏でる

出会いの喜びの曲を

けれど

声なきあなたの足元を
声もつ人々は一言も発せず俯き歩き去る

声もつ人々から
奪われた声
発せない声

自由に動く手足を得ても
失った心の自由
圧力に詰まる呼吸

仰向くことを忘れ
項垂れひたすら歩き続ける人々に
あなたは声なく泣く

気付いてよと
葉と葉を擦り合わせ
幹を震わせ
語りかける

届かない声
聞こえない声

あなたは涙なく泣く

伝えたい心
叫びたい心

顔を上げてよと
本当の自分が目の前にいるから

声もつ人々が気づくその時まで

声なきあなたは声をかけ続ける




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